お知らせ

善意の拡散

いやいや、もうそのまんま、タイトル通りのお話しなんだけどね。

<【拡散希望】武漢ウイルスは耐熱性がなく、26~27度の温度で死ぬ。お湯を飲めば予防できます>

数日前、我が家で最初にこの情報を見つけて、「お湯が効くんだって。 外出する時も、ポットにお湯を入れて持ち歩いたら安心みたいよ。」

そんなことを言いだしたのは、母でした。

でもさ、冷静に考えたらおかしくない? そもそもお風呂のお湯の温度って40℃前後でしょ。 お風呂で簡単に死んじゃうようなウィルスが、何故感染するわけ??

それ以前に、人の体温だってフツー、36℃はあるわけだから、人の体温で死ぬはずじゃん??

「出所がわかんない、ちょっと怪しい情報だから、人に教えない方がいいよ」なんて、言ってたら、案の定…。

このデマ情報って、その翌朝には、結構な範囲で拡散されていたみたいで、小さな子供さんのいらっしゃるお母さんたちの中でも、「子供たちにとっての大事な情報です‼」と、一生懸命SNSやLINEで拡散していたママなんかもいたみたい。

こういうのって、いわゆる「善意の拡散」なんですよね。

東日本大震災の時の災害時デマのこと、覚えていらっしゃる方も多いかと思います。

「本日18時以降関東の電気の備蓄が底をつくため、中部電力や九州電力からも送電を行います。一人が少しの節電をするだけで、関東の方の携帯が充電を出来て情報を得たり、病院にいる方が医療機器を使えるようになり救われます!」

こういう内容のデマ、流れましたよね。

「私たちが電気を節約してあげることで、被災地の方たちに多くの電力を送ってあげましょう‼」

あの時、私のところにも、何件かの、こんな内容のメールが回ってきました。

「こういう時だからこそ、安易にデマを信じこんで拡散させたりしないようにしましょう」と、ブログで呼びかけたら、「人助けをしようと思ってやったことなのに、非難されるなんてあんまりです」という内容のメールが届いたりして、逆に非難されてしまいました(苦笑)

「大変な時だから、少しでもたくさんの人にこの大事な情報を知らせてあげたい」 そういう善意の気持ちが、デマを拡散させてしまう…なんとも困ったことですが、善意の気持ちだけに、責めるわけにもいかないというか…。

そもそも、デマの発信源は、軽い気持ちで面白がってやったとか、ちょっとした思いつきや出来心だったり、ひどい悪意というほどのことでもなかったりするのかもしれませんが、今の時代、あっという間に情報は拡散されてしまいます。

拡散している情報がデマだけに、たとえ「善意」でも、とんでもない混乱を招いてしまうのです。

コロナウイルスの「熱で死ぬ」というデマも同様ですよね。

ママたちは、子供や家族を守ろうと必死の気持ちですから、「すぐにみんなにも教えてあげなくちゃ‼」と思ってしまうのは、仕方のないことだと言えるでしょう。

今回のトイレットペーパーやティッシュがあっという間になくなってしまっただけでなく、「紙おむつ」まで店頭から消えてしまったというのも、「念のために買いだめしておいたほうがいいよ‼」という「善意の拡散」が、(悪い意味で)一役も二役もかっているのかもしれません。

不安な心理状態が冷静さを欠いて、うっかりとデマを信じて拡散してしまったりしないように、こういう時だからこそ余計に気を付けなくちゃいけませんね。

「疫病(えきびょう)」とは、いわゆる集団発生するタチの悪い流行り病のことですが、疫病神(やくびょうがみ)の疫病と同じなんですね。

この日本の歴史上でも、疫病は多くの人たちを苦しめ、たくさんの命を奪ってきたやっかいなものですが、今のコロナウイルスもまさに疫病ですし、デマの拡散も同じく疫病のようなものですよね。

これが昔のことなら、「怨霊の祟りだ‼」とか言って、人々に恐れられたのかもしれません。

私の住む博多の街の古くからのお祭りに、「博多祇園山笠」という有名な神事があります。

このお祭りは、今から800年近く前の鎌倉時代に、博多の街で疫病が大流行した時、承天寺という臨済宗(禅宗)の住職である聖一国師が、弟子たちに担がれた施餓鬼棚に乗って、水を撒きながら町を清めてまわり、疫病退散の祈願をしたことが始まりだといわれています。

ですから、博多の街の総鎮守である、「櫛田神社」を出発した山笠のヤマは、男衆に担がれて、今でもまず、承天寺の前へ向かいます。

そこで合掌した住職たちに迎えられ、それから勇ましく、博多の街を駆け抜けるという、とても勇壮なお祭りです。

施餓鬼というのは、生前に悪い行いをして地獄に落ちた人や、誰も供養してくれる人がいない魂や、飢えで苦しんで亡くなった人の魂のことをいうのですが、聖一国師は、その施餓鬼の供養を行うことで、疫病を鎮めようとしたのですね。

なので、実は博多祇園山笠というお祭りは、素戔嗚尊(スサノオノミコト)の祇園祭りではありますが、博多では神道と仏教の両方のお祭りでもあるんです。

「神仏に祈る」という言葉があるけども、人は、心からの願い事がある時には、神にも仏にも祈りたくなる…むしろ、神だの仏だのといった概念や境界など抜きにして、とにかくひたすら懇願するもので、昔、疫病が流行ったときには、それほど必死で人々が、神仏に祈ったのだという話を聞いたことがあります。

ところで、聖一国師による施餓鬼供養によって、疫病はおさまったのだと言いますから、ロジカルな見方をすれば、もしかすると、清めの水を撒いたことで埃などが落ち着き、病原菌の拡散を抑えたというようなことがあったのかもしれませんね。

この承天寺の聖一国師は、当時、中国の「宋」から、おうどんやお蕎麦、お饅頭の製法を持ち帰り、この地に広めた方でもあります。

今でもそれを記念する碑が境内に残されていますよ。

やがて、その製法は日本全国に伝わったそうです。 こういう拡散なら本当に大歓迎ですよね~。

こちらは、大宰府市にある九州国立博物館のロビーに飾られている「博多山笠」です。 ほかにも、福岡空港の国際線ロビーにも飾られているものも、一年中見ることができます。

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今日もご覧下さってありがとうございます。


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