幸せのために「いただきます」を考える｜パワーストーンカウンセラー彩のラブスピリチュアル

「おはよう」「おやすみ」「行ってきます」「おかえりなさい」

そんな日常の挨拶を、いつも欠かさず、自然に伝えあっていること。

「いただきます」
「どうぞ召し上がれ」

この挨拶も、我が家では毎日の、ごはんを食べる人と作った人の当たり前のやりとりです。

当たり前のことだけど、これはもしかして、ウチの家族の良いところかもしれないなって、ふと思いました。

特別何も誇れるようなことはないし、一般的なとにかくフツーの家族だけど、もしかしてフツーの家族だからこそ、当たり前に、こんな日常の挨拶が自然に交わし合えている。

だから、それが我が家の誇り。

もしかして、こういうことが「幸せ」ってことなんじゃないかなって、何故か急にそんな気がしました。

幸せは、日常の何気ないところに何気なくたくさん隠れている。

感謝することって、幸せの確認作業だと思うんです。

ただ、あたりまえに家族同士での「おはよう」や「おやすみ」、「ありがとう」や「どういたしまして」の挨拶が何気なく、当たり前に交わせるということって、考えてみたら、とっても有難いことなんですよね。

幸せって、当たり前の中に、たくさんたくさん隠れてるものなんですよね。

だから、それをどれだけたくさん見つけられるかが、幸せの秘訣。

そろそろ夏休みも終わるころ。　今日は、このお話をご紹介いたしますね。

西日本新聞社『いのちをいただく』より　

牛を殺すとき、牛と目が合う。そのたびに坂本さんは、
「いつかこの仕事をやめよう」と思っていた。

ある日の夕方、牛を荷台に乗せた一台のトラックがやってきた。

「明日の牛か…」と坂本さんは思った。

しかし、いつまで経っても荷台から牛が降りてこない。

不思議に思って覗いてみると、10歳くらいの女の子が、
牛のお腹をさすりながら何か話し掛けている。

その声が聞こえてきた。
「みいちゃん、ごめんねぇ。みいちゃん、ごめんねぇ……」
坂本さんは思った、
（見なきゃよかった）

女の子のおじいちゃんが坂本さんに頭を下げた。

「みいちゃんはこの子と一緒に育てました。　
　だけん、ずっとうちに置いとくつもりでした。　
　ばってん（だけど）、みいちゃんば売らんと、お正月が来んとです。　
　明日はよろしくお願いします…」

（もうできん。もうこの仕事はやめよう）
と思った坂本さん、明日の仕事を休むことにした。

家に帰ってから、そのことを小学生の息子のしのぶ君に話した。

しのぶ君はじっと聞いていた。

一緒にお風呂に入ったとき、しのぶ君は父親に言った。

「やっぱりお父さんがしてやってよ。
　心の無か人がしたら牛が苦しむけん（心がない人がやれば牛が苦しむから）」

しかし、坂本さんは休むと決めていた。

翌日、学校に行く前に、しのぶ君はもう一度言った。

「お父さん、今日は行かなんよ！（行かないといけないよ）」

坂本さんの心が揺れた。そしてしぶしぶ仕事場へと車を走らせた。

牛舎に入った。坂本さんを見ると、他の牛と同じようにみいちゃんも角を下げて威嚇するポーズをとった。

「みいちゃん、ごめんよう。　みいちゃんが肉にならんとみんなが困るけん。　ごめんよう」

と言うと、みいちゃんは坂本さんに首をこすり付けてきた。

殺すとき、動いて急所をはずすと牛は苦しむ。坂本さんが、

「じっとしとけよ、じっとしとけよ」

と言うと、みいちゃんは動かなくなった。

次の瞬間、みいちゃんの目から大きな涙がこぼれ落ちた。

牛の涙を坂本さんは初めて見た。