9月になったので、大久保の媽祖廟にごあいさつに行ってまいりました。
東京媽祖廟は、4階に観音様、媽祖様は3階のお部屋にいらっしゃって、2階が関帝様のお部屋なのですが、関帝様のお隣のぐっと低い場所まで視線を下げると、床の上に可愛らしい虎さんを見つけることができますよ。
前回、媽祖様のお話をしたので、今回は、この可愛い虎さんのことについて語ろうと思います。
ちなみに、可愛くても神様ですから、前に香炉が置いてあります。 入り口でお線香を買った方は、ちゃんと忘れずに虎さんにもお線香を差し上げてくださいね。
知らないと、うっかり気づかずにスルーしてしまいそうになりますが、この虎さんは道教で親しまれている「虎爺(フーイエ)」という神様です。
虎と聞くと、猛獣というイメージが浮かぶ方も多いと思います。
風水や、四柱推命の占術の中でも、虎といえばエネルギーの強さを意味していますが、実際、中国では昔から、その荒々しさには特別な力が宿っていると信じられていました。
とはいえ、東京の媽祖廟をはじめ、台湾の廟で出会う虎爺は、可愛らしくてどこかちょっぴりユーモラス、正直なところ、あまり怖くはありません。
ちなみに、鮑義忠先生のお宅にも虎爺が祀られていますが、やはり猫ちゃんかと思えるくらいの愛嬌のあるお顔立ちで、6年前に2代目のチワワのうきわを迎えた頃、700グラム程度の体重だったうきわと、ちょうど同じくらいの大きさなんです。 それで、何だか余計に愛おしく感じてしまいます。
そもそも獰猛な虎が、なぜこんなに親しみやすさを感じさせるようなお姿で、神さまとして祀られているのか。
調べてみるといくつかの伝承があるようですが、その中でももっとも有名なお話が、医薬の神様として知られる「保生大帝(ほせいたいてい)」との出会いです。
北宋の時代、名医であった保生大帝が山へ薬草を採りに入ったときのこと。
人間の骨が喉に刺さって、抜けなくて苦しんでいる一頭の虎に出会いました。
人を襲う獣とはいえ、目の前で苦しがっている虎のことを、とても見過ごすことができなかった保生大帝は、その喉から骨を取り除いて、手当てをして助けてあげました。
命を救われた虎は「もう二度と人間を襲いません」と固く誓い、そして命の恩人である保生大帝に寄り添って、足代わりとなって付き従うようになります。
名医が薬箱を携えて険しい道を歩むとき、その側にはいつも、恩義を胸に歩く虎の姿がありました。
やがて保生大帝が天に昇って神となったとき、片時も離れず尽くし続けた虎もまた、ともに神獣として祀られるようになりました。
もとは人を脅かす存在だった猛獣が、慈悲の心に触れて生まれ変わり、神様のお供として人々を守る存在になったわけです。
なんて義理堅く、忠実な虎なんでしょうね。
虎爺は主神を足元から支える従神ですから、どこの廟でもたいてい、床の上、低い場所に祀られています。
「下壇将軍」とも呼ばれるその定位置は、ちょうど小さな子どもたちの目線の高さでもあるということで、昔から「子どもを守る神様」としても親しまれているのだそうです。
子供の病気平癒や、健やかな成長を願って、虎爺はとても大切にされています。
そしてもうひとつ、台湾語で虎爺(ホーヤー)の響きは、お金持ちを意味する「好野」によく似ているということで、大人の私たちにとっては何より嬉しい金運・財運のご利益もあるんですよ。
虎爺は、口に小銭をくわえて財を運んでくると信じられており、商売繁盛を願う人々からも絶大な信仰を集めています。
お参りをした時に、小銭を香炉の煙にかざし、それをお守りとしてお財布に忍ばせておくと、お金が集まってくると言われていますよ。
高いところに祀られた神々さまだけでなく、視線を落として、低い場所で静かに恩義を果たし続けている存在にも手を合わせるということは、私たちの日常の中でも、忘れてはいけない優しい気配り心配りに通じるような気がします。
媽祖廟と虎爺は、インスタでご紹介しておりますので、ぜひご覧になってくださいね。
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