知りたがる女の悲劇
今日は、伊万里に行く途中に体験した不思議な出来事についてお話しするつもりだったのです。
だけど、行きつけの美容院に行ったら、いつも私のブローを担当してくれる20代半ばの美容師さんが激ヤセしていて・・・それがあまりに衝撃的だったので、そのお話を先にしようかと・・・。
「ど、どうしたの
やせたよね
」 の、私の言葉に、彼女は申し訳なさそうに答えました。 「ハイ・・・失恋しちゃったんです
」
健康的にダイエットしたわけではないのは一目瞭然でした
20代だと言ったら、年齢詐称で逮捕されそうなほどのやつれ具合・・・
「食べられない、眠れない・・・そしたらあっという間にこんなになっちゃって・・・
彼に、重いから・・・って言われたんです
彼、友達にならなってくれますかね?
」
いや、友達でも重いだろう・・・そんな姿見せられたら・・・
男の子っていうものは、基本的に幸福感漂う女の子が好きなものなのだ。 なかには稀に、不幸そうな女に惹かれる男もいるけれど、そんな男が 「可哀想なんだ、放っとけないんだ
」という女は、同性から見ればたいてい、可哀想でもなんでもなく、結構腹黒いヤツだったりする
そう、ただ騙されているだけだ。
そんなことはよしとして、その彼女にブローブラシで髪を引っ張られながら、私はある女の子のことを思い出していた
・・・ あの子が 「彩さんっ
わたしフラれました~っ
」と大騒ぎしたときは、私も周りも、それはそれは大迷惑だったなぁ・・・
彼女、Sちゃんが大好きなその彼と付き合っていたときも、それはそれでいつも大騒ぎだった
久しぶりにお互い忙しい共通の友人、K美ちゃんと予定を合わせ、やっと3人でお食事が実現したそのお店でも、Sちゃんは携帯の液晶から目を離さない。 聞けば、今日彼は会社の取引先とキャバクラに行っているのだと、ぶるぶると唇を震わせている
「いいじゃん、キャバクラくらいさ
」 と、うっかり言っちゃった私に彼女は ”信じられない
” という顔をした。 そしてこう言った。 「彩さんっ! 彼がキャバ嬢から電話番号聞かれたりなんかしてたら、どうするんですかぁっ
」 ・・・
え、いや、あの、どうするんですかぁっ!と言われてもやねぇ・・・
そうしている間も彼女はひっきりなしにメールを打っている。 ”今、ワイン頼んで、和牛のメインディッシュがもうすぐくるの” そして 「返事がこな~いっ
」 とわめいている・・・
「キャバクラなんでしょ、っていうか、お取引先の手前、彼も今メールなんか出来ないでしょうよ
」 とうとう私はやさしくなだめに入った。 「トイレの中でメールすればいいじゃないですかっ
それくらいできるでしょっ
」彼女はすでに怒り狂っている。 心配で食事どころではないらしい。
「え~、トイレ長いとキャバ嬢に大のほうだと思われるじゃん、そんなのカッコ悪くてできないさ
」 さすがにこれには彼女も返答に困ったらしく、うつむいたが、返信がこない怒りと不安をどこにぶつけたらよいのかわからないらしい・・・
ずっとだまっていたK美ちゃんがその食事の帰り、 「彩さん・・・実は先日ですね・・・
」 と 思い余った様子で私に語り始めました。 「先日、Sちゃんの彼が会社の人と飲み会があるって言う日、行く店突き止めたから、一緒に行ってくれってたのまれたんですよ・・・
」 は? 意味がわからん。
「会社の人と一緒だとか言って、実は合コンだったらどうすんのよ~っ
」 と言って、彼女はじたばたしたのだそうだ。 「もし彼に見つかったら、K美ちゃんがこの店に行こうっていったから、たまたま偶然だよって言うもん
だからお願いぃぃーっ
一緒に来てよぉ~っ
」 と・・・
聞くだけで疲れた
私達はその頃、夜中でもお構いなしに付き合わされる彼女の恋愛相談で、もうへとへとになっていた

「私は今日何時に起きて何を食べて、何をして、これから寝るよって彼に伝えます
私のこと、何でも知ってて欲しいんです
だから彼にも何でも全部私に伝えて欲しいんです
付き合ってるんですもん、当然でしょ 
」 彼女はそう言い張るのだ
それでわかった。 わざわざどうしてキャバクラに行くだとか、この子に告げるのだ? 黙っておけばいいじゃんよ~
と思ったけど、とりあえず言わないと大変なことになると彼は思ったのだろう
そして、当然といえば当然だけど・・・彼女はフラれた
「私のこの一年間はなんだったんだろう~
」彼女はそういって号泣したけれど、私は彼が、よく一年も辛抱したものだと、勲章でもあげたくなった
どんなに親しくても、身近な人でも、何でも知ろうとする必要なんかない。 知らなくていいことだって、たくさんあるんです。
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